妊娠を意識する人にとって、「卵子の老化」は良く耳にするキーワードだと思います。
最近ではさらに「卵子の老化」に大きく関わる存在として「ミトコンドリア」が注目されています。
そこで今回はミトコンドリアと妊活の関係についてご紹介いたします。
この記事をお読みいただくと、ミトコンドリアの重要性やミトコンドリアを増やす方法
を知ることができますので、ぜひ最後までご覧くださいね。
ポイント
- ミトコンドリアの減少や衰えが妊娠率に影響する理由
- 体内のミトコンドリアを増やす・活性化させる方法
そもそもミトコンドリアって何？
動物、植物、菌類、原生生物などの生物の体は、細胞単体か、細胞が無数に集まってできています。その細胞の中には細胞小器官が複数あるのですが、この細胞小器官がミトコンドリアです。
細胞小器官（＝ミトコンドリア）は、食べ物から得られる栄養素と呼吸から得られる酸素をもとにして、エネルギーを生み出します。生み出されたエネルギーはATP（アデノシン三リン酸）と呼ばれており、ATP（アデノシン三リン酸）は呼吸したり、体を動かしたり、考えたり、食べたり、ウィルスや細菌と戦ったり、すべての生命活動の原動力となります。
体内でつくられるATP（アデノシン三リン酸）の約９割はミトコンドリアによってつくられ、このATP（アデノシン三リン酸）が細胞に供給されることで生命活動が維持されているため、ミトコンドリアの体内での役割はとても大きなものといえます。
ただし、体内のミトコンドリアは30代以降減っていきます。
ミトコンドリアって妊娠と関係あるの？
ミトコンドリアと妊娠の関係については、以下のように妊娠に関連した実験も行われております。ただし、まだ効果や安全性が科学的に証明されたわけではありませんので注意が必要です。
高齢出産になる女性の妊娠率向上などを目指して、本人の卵巣から採取したミトコンドリアを卵子に注入する自家移植治療を実施し、２人が妊娠したと大阪市の不妊治療施設が２９日発表した。米国企業が中心に開発し、「卵子の若返り」と呼ばれて一部で注目されている手法で、国内での実施は初めて。一方、効果や安全性が科学的に証明されておらず、専門家から慎重な対応を求める声もある。
今回実施を公表した「ＩＶＦジャパン」によると、この方法は、腹腔（ふくくう）鏡手術などで患者の卵巣にあるとされる「卵子前駆細胞」からミトコンドリアを抽出し、体外受精の時、卵子に精子とともに注入するというもの。ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作る小器官で、「良質なミトコンドリアを注入することで卵子の質を改善し、体外受精の成功率を高める」という。
※出典元：毎日新聞2016年8月30日：「卵子若返り」？２人妊娠 卵巣のミトコンドリア移植 大阪の施設が初実施
ミトコンドリア自家移植治療はこれ以降、国内で実施されています。
ミトコンドリアが卵子の老化、妊娠率に関係する理由
ミトコンドリアは、全身に約60兆個あるという私たちの細胞すべてにそれぞれ１～1,000個ほど存在しているとされています。
身体中のミトコンドリアを集めると体重の約10％にもなるそうです。
ミトコンドリアは体内でたくさんのATPを生産しており、それにより私たち生き物は生きることができているといっても過言ではありません。
そしてここが重要なポイントになりますが、卵子の中にはあらゆる臓器の中で一番多くのミトコンドリアが存在しているのです。
その数なんと、卵子1個あたり10万個です！
逆に言うと、それだけのミトコンドリアを必要とするくらい、卵子は繊細な存在ということですよね。（なお、精子には卵子の1/1000である100個のミトコンドリアがあります）
ミトコンドリアは加齢やストレス、暴飲暴食など乱れた食生活、荒れた腸内環境、有害重金属、炎症などによって減少し、また機能低下します。たとえば暴飲暴食などでたくさんのATPが必要とされると、通常はミトコンドリア内で処理できるはずの活性酸素が漏れ出してしまい、それによりミトコンドリアの機能低下が起こってしまうわけです。
ミトコンドリアの機能が衰えてエネルギーをつくりだす力が弱くなると細胞も機能が低下しますが、ミトコンドリアをもっとも多く抱える卵子は、それらの影響をまっさきに受けることが推測されます。
もっとも卵子の老化については、ミトコンドリアの機能の衰えによるものだけでなく、代謝が落ちたり染色体の末端（テロメア）が短くなったりすることにも関係するという研究も報告されており、そのメカニズムが100％解明されているわけではありません。
しかし、卵子は内包するミトコンドリアの数が臓器の中で最も多いこともあり、ミトコンドリアの機能低下が引き起こすエネルギー不足の影響を大きく受け、結果的に妊娠率に与える影響も大きいと考えられます。
体内のミトコンドリアを増やす・活性化させるには？
ミトコンドリアを増やすには、一般的に「体に良い」といわれていることを実践する必要があります。本記事では参考までに６つご紹介いたします。
ポイント
１．適度な運動（有酸素運動）
２．腹八分目の食事
３．栄養素からの摂取
４．朝日を浴びる
５．ストレスをためない
６．シャワーなどで瞬間的に体を冷やす
１．適度な運動（有酸素運動）
筋肉には赤いものと白いものがありますが、持久力が強く遅筋ともいわれる赤い筋肉に、ミトコンドリアは多く存在しています。特に背筋と太ももの筋肉にはミトコンドリアがたくさんあります。
ウォーキングやヨガなどを会話できる程度の負荷でのんびり30分程度おこなうと、体はポカポカ暖かくなり汗ばんできますが、このとき体は脂肪を燃焼しミトコンドリアを作り始めます。バイク運動であれば、毎日2時間ほど続けることでミトコンドリアが1週間で1.3倍、1ヶ月で2倍にもなるといわれています。
ただし、上記のような運動を日常的に続けるのは無理…という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ミトコンドリアは「少しきついと感じる運動を1分続けるだけ」でも増えるスイッチが作動してくれると言われています。
エレベーターを避けて階段を上がる、スクワットを10回する、早足で1分歩く、といった自分ができることから継続することをおすすめします。
２．腹八分目の食事
暴飲暴食や満腹感を感じる食事をすると、ATPが大量に必要とされてしまい、通常であればミトコンドリアの中で処理できる活性酸素が漏れ始め、ミトコンドリアの機能低下を招きます。逆に空腹を感じることでATPが不足し、酵素の働きのスイッチが張ることで、より多くのATPをつくろうとミトコンドリアが分裂し始めて増えていきます。
ある大学での研究で、摂取カロリーを25％程度少なくすると長寿遺伝子といわれるサーチュイン遺伝子が活性化し、ミトコンドリアが増えたという結果も報告されています。
腹八分目の食事にする、週に1日は1食抜くといった努力をするだけでもミトコンドリアを増やすことができます。
３．栄養素からの摂取
ミトコンドリアの働きを助けたり、増やす効果が期待できる栄養素もあります。ウナギや豚肉に多い「ビタミンB群」、レバーなどに含まれる「鉄」はミトコンドリアがATPを生産するのをサポートする働きをします。
また、イカやタコ、貝類に多く含まれている「タウリン」は、ミトコンドリアを増やす働きがあるといわれています。
４．朝日を浴びる
太陽の光を5～10分間浴びるだけでも、ミトコンドリアは活性化します。朝起きたらまずカーテンをあけて、朝日を思いっきり浴びるのが理想です。
太陽の光によってメラトニンやセロトニンが生成されるのですが、これによりミトコンドリアの天敵ともいえる「活性酸素」を除去する効果も期待できます。
５．ストレスをためない
ストレスがたまってしまうと、心身をコントロールする自律神経が乱れてしまいます。その結果血行が悪くなり、血液の流れが悪くなると栄養と酸素がうまく運ばれなくなるので、ミトコンドリアの質も低下してしまいます。
リラックスできる時間を確保し、なるべくストレスを発散させていくことが大切です。
６．シャワーなどで瞬間的に体を冷やす
寒さを感じると、ミトコンドリアは体を温めようとして活発に働きます。お風呂で、暖かいシャワーと冷たいシャワーを交互に浴びるなどすると効果的です。
まとめ
いかがでしたか。今回はミトコンドリアについて、
ポイント
・ミトコンドリアが妊娠率に影響するとされる理由
・ミトコンドリアを増やしたり活性化させたりする方法
以上のことを中心にお伝えしてきました。
体内でミトコンドリアが増えたり活性化することは、卵子の老化スピードをおさえ、結果的に妊娠率の向上につながります。まずは手軽な方法から始めることがおすすめ。少しずつ習慣化させ、体内のミトコンドリアを増やしていきましょう。
地道でも、これが自分でできる妊娠への近道といえます。
